Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
ですから三十九年の一月に凱旋になった時の祖母の喜びは非常なものでした。その前日に尋ねましたら、「祖母様がちょっと」といわれます。
何かと思ってお部屋へ行きますと、小さな火燵に寄りかかって、笑いながら、「こうやって林が立派にやっていられるので、私たちも仕合せなのを喜んでいますが、孫にだって御主人といってもよかろうねえ」といわれるのです。
「そうですとも。御主人に違いありませんよ」といいますと、「私が歌をよんだから聞いておくれ」といわれます。
「まあ」と、私はびっくりしました。今までついぞそんなことなどおっしゃったことはないのですから。
「笑わないでおくれ」といわれます。
「笑うものですか。ただ珍しいので驚いたのです。」
「無事に帰るのを、私も丈夫で待受けたと思った今朝、庭の蹲いの傍に水仙が一つ咲いていたのが目に附いたので、
御主人のけふお帰りをよろこぶか
ぽつかり咲いた水仙の花
どうだろう、ぽっかり咲いたのがいいたかったのさ。」
私はまた驚きました。昔から家事には精しいのですが、そこらに本があっても見ようとはなさらず、ただ倹約ということばかりをいっていられたのですし、まして近頃は気力も衰えて、はっきりもなさらないのに、どうして歌をお思附になったのだろう、よほどお嬉しいのに違いないと思いますと、いつか目頭が熱くなり