Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

とんだ昔話になりました。

今一つの友禅の切れは、森の母が久しぶりに迎える嫁の料にと、心の中でその面影を忍びながら求めた切れの見本です。家内を迎えるために休暇を取って帰る兄に見せようとせられたのでしょう。その時私がたずねましたら、「お前はまだ見たことがないが、それは美しい人だよ。あの人が来てくれたのに、こんな著物を著せて、そこらに坐らせて置いたら、兄さんはもとより、私がどんなに楽しみだろうと思ってね」と、夢見るような目附をなさったのを、いまでも忘れずにいます。夢想と現実との違うのが世の習いですが、希望の大きかっただけに、母のその後の落胆の度も強かったのでしょう。

観潮楼の二階で、親戚だけの型ばかりの式を挙げて、翌日夫妻は連れ立って任地の小倉へ立たれました。母はその前後をただ多忙に過されましたが、噂を聞いて待っていた祖母は、恐らくその美しい孫嫁の一声をも聞かれなかったでしょう。残念がっていられました。

私が小倉へ向けて手紙を出しましたら、その返事をお嫂様は下さいましたが、文面には兄の息の通っているような気がしました。私は日常に追われて、手紙も度々は出しませんかった。