Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
あちらから戴いたのは、ただ一度だけでした。
美しい方でしたから、まだお若い時に或富豪に望まれて、お片附になったのです。そのお支度をするとて京都に滞在していられたように聞きました。そこはすぐに不縁になって、里に帰っていられる内に、縁があって森の家へ来られることになったので、その時のお支度をそっくり持って来られたのです。兄が東京勤めになって、家族が一緒に住み始めた頃、母は、「いろいろ見せて戴いたよ」といわれました。床の間には定紋の縫のある袋に入れた琴や、金砂子の蒔絵の厨子なども置いてありました。何しろいろいろの衣類を持っていられるのですから、私の娘も一度拝借したことがありました。富豪へお嫁入なすった時に、先方の母親が「お著物を拝見しましょう」といわれ、見終ってから、「官員様のお父様としては、よくお揃えになりましたね」といわれたので恥しい思をした、と話されたそうです。物には段階があるもので、われわれなどの夢にも知らぬあたりのことです。
その頃は誰も遠慮がちなので、静かな家庭のようでした。それがいつまでも続けばよかったのですけれども、そうは行かなかったのです。