Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
「かみがらにやあらん、くにびとの心のつねとして、いまはとて見えざなるを、心あるものははぢずぞなん来ける。これはものによりてほむるにしもあらず。」
このことを先生は気の毒がって、「こんなに書いてありますが」と言いわけをなさるのを、皆笑いました。お家におりおり発作をお起しになる御病気のお母様があったそうで、時間中にお迎いが来ることなどがありましたが、やがてお出にならなくなりました。
漢文の先生は背の高い中年の太った方でした。赤いお顔をはっきり覚えています。小森先生とかいいました。御自分で、いろいろの本から抜萃されたのを仮綴にして配られなどされましたが、この方も間もなくおやめになりました。
級が進んでから中村秋香先生が見えました。お歳は五十歳位でしょうか、痩せた小柄の更けて見える方で、五分刈の頭も大分白く、うつ向いた襟元が痛々しいようです。厚い眼鏡の蔭から生徒たちを見廻されます。始めて出られた時、自分が好む本だからと、新井白石の『藩翰譜』を持って来られて、右手を隠しに入れ、左の手に本を持って、生徒の机の間を歩きながら読上げられます。興に乗って、手振り足踏みが盛んになると、私は面白く聞入っていましたが、大抵の人はくすくす笑います。