Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

その妻が来た時、「今少し広い家へ行きたいのですが、大乗寺が遠くない処と思うのでむつかしいのです」などと話しました。それが、「おやじ、おやじ」というのですが、「おやつ」としか聞えません。それで宅の子供たちは、車屋のことを「おやつ、おやつ」というのでした。

その妻が急病で死んだ後に来たのは、夫より少し年上らしく、目鼻立はわるくありませんが、額が抜け上ってきつい顔をした女でした。今まで飲むとも聞きませんかったのに、夜分女中が使に出た時などは、差向いで飲んでいるのを見るといいました。或時その女が勘定を取りに来ました。抜け上った額に大きな傷があります。「どうしたの」と聞きましたら、「棚から箱が落ちまして」と、口の達者な人なのに、いつもほど喋りません。「まあ、危なかったね」といいました。後に女中が、「あれはきっと撲られたのでしょう。何んでもよく喧嘩をするそうですから」というのを聞いた主人は、「あの男が、いつの間にそんなになったのか」と驚いていました。いつもそそけ髪で、子供を背負って働いていた先妻の顔を思い出しました。子供たちも人に遣ったか、奉公にでも出したか、見えなくなりました。