Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

田圃の中には幾坪か紅や白の蓮が咲いて美しいのも見えますが、立止りもしませんかった。半道ほども行った頃に、大橋際の野菜市場の辺から、別れた土手と一緒になって、綾瀬の方へ曲ります。その岐路に掛茶屋がありました。「くずもちあり」とした、小さな旗が出ています。土手からすぐに這入られるようになっていても、土手下から普請の時の足場のようにして、高く高く掛出しになっていました。客は誰もおりません。

「休もう。」

お兄様がお上りになったので、私も上りました。煙草を吸っていたお婆さんは立上って、

「いらっしゃいまし。」

私の脱いだ下駄を見て、「お嬢さん、さぞ歩きにくかったでしょう。ちょっと直して上げましょう。」

私は嬉しくて、「どうぞ」とたのんで安心しました。丸太を組んで縄で結えた手摺に寄って眺めますと、曇っていてもかなり遠くまで見えます。田圃は青々と濃い絵の具で塗ったように見え、農夫たちが幾人か、起ったり蹲んだりするのは田草取りなのでしょう。処々に水が光っています。隅田川も見えはすまいかと、昔住んだ土地がなつかしくて見廻しました。綾瀬を越して行くと向島の土手になって、梅若や白髭の辺に出るのです。