Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

いつも団子坂へ行くのを楽しみにして、お兄様がお家の時は、近く買われた古本などを見せていただき、その説明をも聴いて、時の立つのを忘れるのでした。お母様のお部屋では取止めもないことを語合って、つい笑い声も立てました。暇乞をすると、用がないからと、いつも送って下さいます。そのままでお出かけですから、「被布の上前が汚れていますよ」といいますと、「こうすればよかろう」と、下前を上にして平気でいられるのを笑ったりなどもしました。そんなですから、いつも裏通りばかりを歩きます。今日はお留守でしたろう、お家なら聞きつけてお出になるのですから。でも今日などはお目にかかりたくありません、お話する気もありませんから。家に不穏の空気が漲る時は、誰も誰もつつましやかにしています。昔はそうしたことなどありませんかった。私は一人でそんなことを思っていました。

その時入口が開いて、女が急いで這入って来て、「団子坂の檀那様がお見えになりました」といいます。びっくりして出ると、そこに軍服を著たお兄様が、いつもの微笑をして立っていられます。

「来てくれたってね。失敬した。」

私はきまりが悪く、「さあどうぞ」