Japanische Klassiker mit Furigana
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こうのすにょうぼう
鴻ノ巣女房
矢田 津世子
Lesen Sie 鴻ノ巣女房 (こうのすにょうぼう) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.884 Zeichen · 24 Bildschirme
一人者だときいていたのに、暮してみると男には子供があった。三度目のおかみさんの子だったが、死別したはずのそのおかみさんもしゃんしゃんしていて、今は堺のほうの旅館で働いているということまで分った。子供はどこに預けておいたのか、間もなく男が引き取って来た。ようようつかまり歩きをし出したばかりの男の子で、俊雄と呼ばれていた。
男が大酒飲みだということもだんだん分った。酒癖が悪くて喚き出すと手に負えなかった。三白の眼をすえ「馬面」、とか「シャグマ」とかいって、ぎんを呼びたてるのだった。小間物の行商もとかく怠けがちだったが、そのうちどこで仕入れるのか信州綿というのに肩代りした。こんどの行商は気骨が折れる、一軒一軒で口上だからと、捨吉は不機嫌だった。玄関に上りこむなり荷をひろげて、山繭の屑糸からとれた丈夫な絹綿だと云い、足でふんづけたり手綱によじってみせたりして、「これこの通り!」と買手へ請合顔して見せるのだった。綿の中味は人絹屑の加工物をつかい、どうせ知れたまやかしものであった。どこで手に入れたのか、知名の人の名刺を勿体ぶって財布から取り出して見せ、こんなに支持してもらっているからと、買手の度胆を抜いてかかる。