Japanische Klassiker mit Furigana
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わし
鷲
岡本 綺堂
Lesen Sie 鷲 (わし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.476 Zeichen · 290 Bildschirme
まだ五つ(午後八時)を過ぎたくらいであろうと思われるのに、ここらは深夜のようにしずまって、田畑のあいだに遠く点在する人家の灯もみな消えている。
又次郎はどこをあてともなしに、明るい往来をさまよい歩いていたが、ふと気がつくと、自分のうしろから忍び足につけてくるような足音がきこえた。振り返ってみると、それは若い女であった。月が冴え渡っているので、女の顔はよくわかった。それはお蝶の姉のお島であった。
江戸の屋敷にいるはずのお島がどうしてここらを歩いているのか。それを考える隙もなしに又次郎は引っ返して女のそばへ寄った。
「お島……。どうして来た。」
彼はなつかしそうに声をかけたが、お島はだまっていた。しかもその白い顔は正面から月のひかりを受けているので眉目明瞭、うたがいもない江戸屋敷のお島であった。
「むむ、わかった。」と、又次郎はうなずいた。「おやじの病気見舞にきたのか。」
お島はうなずいた。
「そうか。親孝行だな。江戸を出てから、まだ十日ばかりだが、このごろはおまえが恋しくなって、ゆうべもお前の夢をみた。いや、嘘じゃあない。今夜も酒に酔って、いい心持になってここらをぶらついていると、急に江戸が恋しくなって……。