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Japanische Klassiker mit Furigana

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さとう

麻布襍記 ――附・自選荷風百句

永井 荷風

Lesen Sie 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.256 Zeichen · 77 Bildschirme

Aozora Bunko

トルコ珈琲のすこし酸いような渋い味いは埃及煙草の香気によく調和するばかりでない。仏蘭西オリヤンタリズムの芸術をよろこび迎えるわたしにはゴーチェーやロッチの文学ビゼやブリュノオが音楽を思出させるたよりとも成るからであった。

いつ時分からわたしは珈琲を嗜み初めたか明かに記憶していない。然し二十五歳の秋亜米利加へ行く汽船の食堂に於てわたしは既に英国風の紅茶よりも仏蘭西風の珈琲を喜んでいた事を覚えている。紐育に滞留して仏蘭西人の家に起臥すること三年、珈琲と葡萄酒とは帰国の後十幾年に及ぶ今日迄遂に全く廃する事のできぬものとなった。

蜀山人が長崎の事を記した瓊浦又綴に珈琲のことをば豆を煎りたるもの焦臭くして食うべからずとしてある。わたしは柳橋の小家に三味線をひいていた頃、又は新橋の妓家から手拭さげて朝湯に行った頃――かかる放蕩の生涯が江戸戯作者風の著述をなすに必要であると信じていた頃にも、わたしはどうしても珈琲をやめる事ができなかった。

各人日常の習慣と嗜好とは凡そ三十代から四十前後にかけて定まるものである。中年の習慣は永く捨てがたいものである。捨て難い中年の習慣と嗜好とを一生涯改めずに済む人は幸福である。