Japanische Klassiker mit Furigana
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Lesen Sie 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.256 Zeichen · 77 Bildschirme
再び表通りへ出てビーヤホールに休むと書生風の男が銀座の商店や新橋辺の芸者家の打壊された話をしていた。
わたしは始めて米価騰貴の騒動を知ったのである。然し次の日新聞の記事は差止めになった。後になって話を聞くと騒動はいつも夕方涼しくなってから始まる。其の頃は毎夜月がよかった。わたしは暴徒が夕方涼しくなって月が出てから富豪の家を脅かすと聞いた時何となく其処に或余裕があるような気がしてならなかった。騒動は五六日つづいて平定した。丁度雨が降った。わたしは住古した牛込の家をばまだ去らずにいたので、久しぶりの雨と共に庭には虫の音が一度に繁くなり植込に吹き入る風の響にいよいよ其の年の秋も深くなった事を知った。
やがて十一月も末近くわたしは既に家を失い、此から先何処に病躯をかくそうかと目当もなく貸家をさがしに出掛けた。日比谷の公園外を通る時一隊の職工が浅葱の仕事着をつけ組合の旗を先に立てて隊伍整然と練り行くのを見た。その日は欧洲休戦記念の祝日であったのだ。病来久しく世間を見なかったわたしは、此の日突然東京の街頭に曽て仏蘭西で見馴れたような浅葱の労働服をつけた職工の行列を目にして、世の中はかくまで変ったのかと云うような気がした。