Japanische Klassiker mit Furigana
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てらだとらひこ
黄道
和辻 哲郎
Lesen Sie 黄道 (てらだとらひこ) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.971 Zeichen · 59 Bildschirme
我々は本郷、小石川、牛込、四谷というふうに山の手全体に燃えひろがってくることを想像した。通りに出ると疲れ切った避難者が、あるいはそのか弱い背に子供を背負い、あるいは包みを背負って幼い子供の手をひき、トボトボと歩いて行く。ある者は手車に荷物を積んでその上に老人をのせている。そのすべてが、煙をくぐりぬけたためか、着物も皮膚も薄黒く汚れている。それを見ると、涙ぐましい心持ちになると共に、やがて自分たちもああして逃げなくてはなるまいという恐れを感ずる。いよいよ大火の惨状が現実として迫って来たのである。
あとになって行ってみると、外濠に沿って歩けば四谷見附から飯田橋までは焼跡を見ないですむ。また青山の通りから六本木を経て芝公園までもそうである。しかし我々はそうとは知らなかった。江戸川べりが焼け切ったと聞いた我々は、その両岸の高台、小石川と牛込とが燃えつつあると信じた。麹町の通りからは四谷へぬけ、南は芝と麻布へ燃えひろがりつつあると信じた。幾度か踏切へ行って通行人にただしたが、どの報告もそう信じさせるに充分であった。もう戒厳令もしかれ、軍隊が消防に努めつつあると伝え聞いても、大火に慄え上がった我々には、とてもこの火が消しとめられそうに思えなかった。