Japanische Klassiker mit Furigana
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てらだとらひこ
黄道
和辻 哲郎
Lesen Sie 黄道 (てらだとらひこ) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.971 Zeichen · 59 Bildschirme
自分はその苦しみを共に分かたずにいられない切迫した心持ちになった。がそれは自分だけではない。目に入る限りの人間がすべてその心持ちを共にしているように思われたのである。天災に縛られていた人間の心が今や町全体の上に湧然と涌きのぼっているような心持ちである。が四谷の塩町に行くまでは自分はまだ幾分の平静を保つことができた。塩町で初めて見知らぬ人と口をきいたとき、なぜとも知らず涙がこみ上げて来たのである。自分は市が谷見附へ辿りつくまでそれをとめることができなかった。それは一方では罹災者の苦しみへの同情である、が他方では町全体に渦巻いている純粋な人間の情緒への感動である。今やいっさいの営利のシンボルは町から消え去った。人々はただ苦しみと苦しみを救おうとする心との他に何物をも持っていない。その人生の姿が自分を動かしたのである。だから四谷見附で中学生らしい二人の子供をつれた紳士が、水筒と写真機とを肩にかけて、のんきな声で、「さあどっちから廻ろうかな」と言っているのをきいたときには、思わず撲りつけてやりたい衝動を感じた。が一方では通りすがりにちょっと小耳にはさむ或るやさしい一語でもが、すぐに新しい涙をさそう。