Japanische Klassiker mit Furigana
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こうちょうのなげき
黄鳥の嘆き
甲賀 三郎
Lesen Sie 黄鳥の嘆き (こうちょうのなげき) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.792 Zeichen · 82 Bildschirme
僕もむろん生れた子を可愛いとは思うが、二川の真似は出来ない。彼は恰で外の事を忘れている。明けても暮れても、赤ン坊の顔ばかり眺めているのだ。あの若さで、子爵の御前が、不器用な手つきで赤ン坊を抱いて、あやしている姿は天下の珍景だ。
然し、僕は二川が新たに生れた子供に対する態度を通じて、彼がどんなに妻を熱愛しているかを知る事が出来る。全く彼が子供を得た喜びの半分は、彼の亡き後に妻が頼って行くものが出来たという事にあるのだ。彼は飽くまで自分を短命なものと信じている。
朝子さんの献身的態度にも敬服する他はない。流石は公家の出である。病弱の身体で、あの気紛れな――今は大へんよくなったが――癇癪持ちの夫に仕えて、些の不満も現わさず、唯々諾々として忠実を守っている姿は涙ぐましいものがある。兎に角、立派な夫婦だ、それに子供は出来たし、もう重武などを少しも恐れる所はないだろう。そういえば、重武は近々上京するという手紙を寄越したそうだが、仮令彼が東京で住む事になっても、二川家には大した波瀾は起らないだろうと思う。
それから暫くは、二川家は泰平だったらしい。重明が歩き出すようになり、片言を喋るようになる時分に、野村はその遊び相手として、度々二川家に行った訳である。