Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

くろいてちょう

黒い手帳

久生 十蘭

Lesen Sie 黒い手帳 (くろいてちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.026 Zeichen · 38 Bildschirme

Aozora Bunko

一、一月十三日、いよいよ今日から観察を開始することにきめ、手帳を一冊用意して、医家の臨床日記のような体裁で、夫婦の言動にあらわれた犯罪的徴候を逐一書きとめておくことにした。詭計を用いて意図をさぐりとることは容易であろうが、自分は飽くまでも観察者の位置にとどまることを欲する者であるから、その方法は好まない。自然発生的にあらわれた外部的徴候と、多少の心理的打診による以外に状勢を察知する手段がないが、自分の専門の研究はあたかも一段落をつけたところなので、一日の全部の時間を観察にあてることが出来る。それで一日を三分し、午前を毒物学の研究のために割き、午後は六階の住人の部屋で、夜は夫婦のところで過すことにきめた。

ところでここに一つの困難というのは、毎日六階の住人を訪問する口実がないことである。彼はすぐれた洞察の才をもった男であるからいい加減な言いぬけでは意図を見抜かれるおそれがある。大人気ない思いつきから、不快をあたえたあの夜以来彼に逢う機会がなかったがその折の陳謝をしながら、適当な口実を見つけようと思って六階へあがって行った。

彼は窓に倚って茫然と暮れかかる巴里の空をながめていたが、こちらへ振返ると当惑したようすでだまって椅子をさし示した。