Japanische Klassiker mit Furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Lesen Sie 黒百合 (くろゆり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 78.148 Zeichen · 154 Bildschirme
でも、あの余計にゃあ無いもんだ。こいつあね、蠅じゃあ大きくって、駄目なの、小さな奴なら蜘蛛の子位は殺つけるだろう。こら、恐いなあ、まあ。」
心なく見たらば、群がった苔の中で気は着くまい。ほとんど土の色と紛う位、薄樺色で、見ると、柔かそうに湿を帯びた、小さな葉が累り合って生えている。葉尖にすくすくと針を持って、滑かに開いていたのが、今蟻を取って上へ落すと、あたかも意識したように、静々と針を集めて、見る見る内に蟻を擒にしたのである。
滝太郎は、見て、その験あるを今更に驚いた様子で、
「ね、特別に活きてるだろう。」
五
「何でも崖裏か、藪の陰といった日陰の、湿った処で見着けたのね?」
「そうだ、そうだ。」
滝太郎は邪慳に、無愛想にいって目も放さず見ていたが、
「ヤ、半分ばかり食べやがった。ほら、こいつあ溶けるんだ。」
「まあ、ここに葉のまわりの針の尖に、一ツずつ、小さな水玉のような露を持っててね。」
「うむ、水が懸って、溜っているんだあな、雨上りの後だから。」
「いいえ、」といいながら勇美子は立って、室を横ぎり、床柱に黒塗の手提の採集筒と一所にある白金巾の前懸を取って、襟へあてて、ふわふわと胸膝を包んだ。