Japanische Klassiker mit Furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Lesen Sie 黒百合 (くろゆり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 78.148 Zeichen · 154 Bildschirme
学校は私立だったが、先生はまたなく滝太郎を可愛がって、一度同級の者と掴合をして遁げて帰って、それッきり、登校しないのを、先生がわざわざ母親の留守に迎に来て連れて行って、そのために先生は他の生徒の父兄等に信用を失って、席札は櫛の歯の折れるように透いて無くなったが、あえて意にも留めないで、ますます滝太郎を愛育した。いかにか見処があったのであろう。
三十一
しかるに先生は教うるにいかなる事をもってしたのであるか、まさかに悪智慧を着けはしまい。前年その長屋の表町に道普請があって、向側へ砂利を装上げたから、この町を通る腕車荷車は不残路地口の際を曳いて通ることがあった。雨が続いて泥濘になったのを見澄して、滝太が手で掬い、丸太で掘って、地面を窪めておき、木戸に立って車の来るのを待っていると、窪は雨溜で探りが入らず、来るほどの車は皆輪が喰い込んで、がたりとなる。さらぬだに持余すのにこの陥羂に懸っては、後へも前へも行くのではないから、汗になって弱るのを見ると、会心の笑を洩らして滝太、おじさん押してやろう、幾干かくんねえ、と遣ったのである。自から頼む所がなくなってはさる計もしはせまい、憎まれものの殺生好はまた相応した力もあった。