Japanische Klassiker mit Furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Lesen Sie 黒百合 (くろゆり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 78.148 Zeichen · 154 Bildschirme
三十五
湯の谷の神の使だという白烏は、朝月夜にばかり稀に見るものがあると伝えたり。
ものの音はそれではないか。時ならず、花屋が庭続の藪の際に、かさこそ、かさこそと響を伝えて、ややありて一面に広々として草まばらな赤土の山の裾へ、残月の影に照らし出されたのは、小さい白い塊である。
その描けるがごとき人の姿は、薄りと影を引いて、地の上へ黒い線が流るるごとく、一文字に広場を横切って、竹藪を離れたと思うと、やがて吹流しに手拭を被った婦人の姿が顕れて立ったが、先へ行く者のあとを拾うて、足早に歩行いて、一所になると、影は草の間に隠れて、二人は山腹に面した件の温泉の口の処で立停った。夏の夜はまだ明けやらず、森として、樹の枝に鳥が塒を蹈替える音もしない。
「跟いておいで、この中だ。」と低声でいった滝太郎の声も、四辺の寂莫に包まれて、異様に聞える。
そのまま腰を屈めて、横穴の中へ消えるよう。
お兼は抱着くがごとくにして、山腹の土に手をかけながら、体を横たえ、顔を斜にして差覗いて猶予った。
「滝さん、暗いじゃあないか。」
途端に紫の光一点、※と響いて、早附木を摺った。