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Japanische Klassiker mit Furigana

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くろばしゃ

黒馬車

宮本 百合子

Lesen Sie 黒馬車 (くろばしゃ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.235 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

避病院に関しての迷信、

子供の間から、駒込に曲って行く黒馬車や吊台を見るとにげるくせのついて居る娘は、家に居るよりは当人のためになるとは知りながら、何だか悪い事のある様な、恐ろしい気持にならずに居られなかった。

「なおるでしょうねえ。

と云って、

「どうしてそんな事を云うのだい。

なおるものはなおるに定まって居るじゃあないか。

馬鹿な事を云う人だ。

と叱られたりした。

主婦は、斯うしたかなりの家から駒込送りの病人を出した事を非常に恥辱の様に思い、子供達は気味も悪がり、女中共は涙をこぼし、主は、

「道徳だの頭の程度の違うものと生活するのはよくない事だ。

と云って居た。

斯うした種々の気持は皆一まとめになって物音もしない熱気の漲る病人の小部屋にながれて行くのであった。わびしそうな姿をして、口をもきかずに息子のわきについて居る父親は、自分の子をつれて行く黒馬車を待ちながら堪えられぬ怖れに迫られて居る様に、時々土間に下りては、暗い中を、遠い門の方をながめてぼんやり立ちくらして居るのを見ると、女親の様に、涙も気ままにこぼせない意地で保つ心根が、何かやさしい言葉をかけて、なぐさめてやりたいほどに思われた。