Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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つづみくらべ

鼓くらべ

山本 周五郎

Lesen Sie 鼓くらべ (つづみくらべ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.577 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

三

……はじめのうちはたまたま射しかける陽のぬくみにも溶けた雪が、家の蔭に残り、垣の根に残りして次第にその翼をひろげ、やがてかたく凍てて今年の根雪となった。

おおつごもりの明日に迫った日である。お留伊が鼓を打っていると、庭の小柴垣のところへ、雪蓑に笠をつけた人影が近寄って来た。

――まあ、やっぱりまだいたのね。

お留伊はあの老人だと思って、鼓をやめて縁先まで立って行った。……けれどそれはあの老人ではなく、まだ十二三の見慣れぬ少女であった。

三

「あの? お願があってまいりました」

少女はお留伊を見ると、笠をとりながら小腰を跼めた。

「おまえ誰なの」

「わたくし宿はずれの松葉屋と申す宿屋の娘でございますが、うちに泊っておいでの老人のお客さまから、お嬢さまに来て頂けますようにって、頼まれてまいりました」

「あたしに来て呉れって」

「はい、病気がたいへんお悪いのです。それでもういちど、お嬢さまのお鼓を聴かせて頂いてから死にたいと、そう申しているのです」

あの老絵師だということは直ぐに分った。

普通の場合なら、いくら相手があの老人であっても、そんなところへ出掛けて行くお留伊ではなかった。