Japanische Klassiker mit Furigana
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どんてん
21世紀の日本人へ 永井荷風
永井 荷風
Lesen Sie 21世紀の日本人へ 永井荷風 (どんてん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.356 Zeichen · 51 Bildschirme
仮寐の夢
○家が焼けてから諸処方々人の家の空間をさがして仮寐の夢を結ぶようになって、ここに再び日本在来の家の不便を知るようになった。襖障子を境にしている日本の家の居室には鍵のかかる処がないので、外出した後の用心をすることができない。空巣ねらいの事はさて置き、俄雨の用心には外出のたびごとに縁側と窓の雨戸をしめて帰るとまたそれをあけなくてはならない。むかしから雨戸と女房に具合の好いものはないという諺がある。日本の家に住むにはまず雨戸の繰出し方から演習して行かねばならない。雨戸も二三枚ならばよほど楽であるが、五枚六枚とつづく長い縁側の雨戸と来たら、指先を傷めぬように手袋でもしてかからねばなるまい。ピエールロチのたしか日光紀行に旅館の女中が夕まぐれに何枚と知れぬ雨戸を巧みに繰出す技芸を見て嘆賞するくだりがあった。日本人が家居の様式は江戸時代から明治を経て昭和の今日に至るも、大体において変るところがない。政治は変っても日本人の生活は一二世紀前のむかしと一向変っていないのだ。戦いに負けて政体を云々する人の声も聞かれるようだが、それらの人の住む家と雨戸の不便とはこの後も長くむかしのままにつづくのであろう。