Japanische Klassiker mit Furigana
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どんてん
21世紀の日本人へ 永井荷風
永井 荷風
Lesen Sie 21世紀の日本人へ 永井荷風 (どんてん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.356 Zeichen · 51 Bildschirme
樹木の多い郊外の庭にも、鶯はもう稀に来て鳴くのみである。雀の軒近く囀るのを喧しく思うような日も一日一日と少くなって行くではないか。わたくしは何のために突然こんな事を書きはじめたのか。それは梵鐘の声さえ二三年前から聞き得なくなった事を、ふと思返して、一年は一年よりさらに烈しく、わたくしは蝉との庭に鳴くのを待詫るようになった。――何故に待ちわびるようになったか、その理由をここに言いたいと思ったからである。昭和という年も数えて早くも十八年になった今日、東京の生活からむかしのままなる懐しい音響を、われわれの耳に伝えてくれるものは、かのオシイツクツクと蝉の鳴く声ばかりであろう。蝉も※(「虫+車」、第3水準1-91-55)も、事によっては雁や時鳥と同じように、やがて遠からず前の世の形見になってしまうのかも知れない。
ある年浅草公園のある劇場の稽古に夜を明しての帰りみち、わたくしは昨夜のままに寝静まった仲店を歩み過ぎた時、敷石を踏む跫音さえ打消すほど、あたり一面に鳴きしきる※(「虫+車」、第3水準1-91-55)の声をきいて、路におちた宝石を拾ったよりも嬉しく思ったことがあった。