Japanische Klassiker mit Furigana
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どんてん
21世紀の日本人へ 永井荷風
永井 荷風
Lesen Sie 21世紀の日本人へ 永井荷風 (どんてん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.356 Zeichen · 51 Bildschirme
知る人の家をたずね、久しく会わなかった旧友に出会ったりして、思いの外に夜をふかすような事がある。すると、そのかえり道、夜ふけの風がいつともなく涼しくなっていて、帽子をかぶった額際も汗ばまず、おのずと歩みも軽くなるのに心づき、いよいよ今年の秋もふけかけて来たことを思知って、音もせぬ風の音をきこうとするであろう。
わが家に辿りついて、机の上の燈火をつけると、その火影もまた昨夜とは違い、にわかに清く澄んでいるような心持がする。夏の夜とは全くちがった官覚のしめやかさに驚かされ、何というわけもなく火影とその周囲の物の影とが見詰められる。わたくしがその年の秋に初めて鳴出すの声をききつけるのは、大抵こういう思いがけない瞬間からである。
けれども、初めて聞く※(「虫+車」、第3水準1-91-55)の鳴音はオシイツクツクと同じように、初めはすぐさま途切れて、そのまま翌日の夜になっても聞かれないことがある。そして虫の声を待つ宵は三日四日と空しく過ぎて行く。夕暮はもう驚くばかり短くなっている。オシイツクツクの声は日にまし騒がしく忙しなく、あたりが全く暗くなってしまうまで、後から後からと追いかけるように鳴きつづけている。