Japanische Klassiker mit Furigana
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どんてん
21世紀の日本人へ 永井荷風
永井 荷風
Lesen Sie 21世紀の日本人へ 永井荷風 (どんてん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.356 Zeichen · 51 Bildschirme
その光の増すにつれ、上野の森は次第に遠く見え、その上の曇った空は怪しくも低くなり、暗くなって行く。冬の夕暮が近付いて来たのだ。野鴨が二三羽、真黒な影かとばかり、底光りする水面に現れて、すぐまた隠れてしまった。けたたましい羽音と共に、烏の群れが、最初は二羽、それから三羽四羽と引きつづいて、自分の頭の上の松の木にとまって啼き出した。それに応えて、上野の森の方からは、なおも幾羽と知れず、後を追って飛んでくるらしい。松の実が二ツばかり、鋭い爪に掴まれた枝から落ちて、ピシャリと水の上に響いた。水の上に映っている沈静したすべての物の影が、波紋と共にゆらゆら動いて、壁紙の絵模様のようになる……。面白い眺である。しかし自分は余りに騒がしく鳴き叫ぶ烏の声に急き立てられて、ついに水際の捨石から立上らねばならなくなった。
自分は今日始めて見る、名ばかし美しい観月橋をば、心中非常な屈辱を感じながらも、仕方なしに本郷の方へと渡って行く。四五日ほども引続いて、毎日曇っていた冬の空は、とうとう雨になった。満池の敗荷はちょうど自分の別れを送る音楽の如く、荒涼落寞の曲を奏ではじめる。