Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

エムこ

M子

宮本 百合子

Lesen Sie M子 (エムこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.403 Zeichen · 5 Bildschirme

Aozora Bunko

。

その時私は菊の大模様のついた渋い好いメリンスの袷を着て居たと覚えて居る。

そうして静かな中にじいっと一つ物を見つめて居る事は今になってさえ止まない私の気持の良い胸のときめく様な気のする事である。

私はややしばらくの間、そうやって居た。

胸の中には何とも云い知れぬ喜びと平和な思いが満ち満ちて人が見たら変だろうと思われる微笑を唇に浮べながら地面を見て静かに藤棚の下を歩き廻って居た。

それまで一寸も気のつかないで居た事だけれ共さっきまで私の居たすぐわきに下の級のものが五六人かたまって低い声で何か話して居るのに気がついた。

その中で一番背の高い黒っぽい長い髪を房々とさげた人が気になる様に時々私の方を見ては何か云いたい様な様子をする。

私は直覚的に若しやあの人が「Aさん」と云われて居る人じゃああるまいかと思った。

私の下の級で「Aさん」は文章達者な人だと云う事が話に出た事があるし又その文章を見せてもらった事も有ったが、色の淡い、おっとりした淋しい筆つきの人だと云う事だけは知って居たけれ共顔は知らなかった。

私はきっと彼の人だと思った。

どうしても聞かずには置けない様な気がして傍に居る眼のギロリとした、いやな声を出す人に、