Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あめんちあ
あめんちあ
富ノ沢 麟太郎
Lesen Sie あめんちあ von 富ノ沢 麟太郎 (とみのさわりんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.594 Zeichen · 83 Bildschirme
その帰りがけに、彼は鏡の壁のあるカフェへ寄って、椅子にかけていてちょうどいい具合に上半身の映る鏡を覗き覗き、自分の映像を相手に大へん大きな下顎を上顎へ摺り合せながら食事をした。
そうして彼はその店を出て、細い小路を抜け、通りへ出ようとした角のところで、突然呼び止められて吃驚した。
「傘に入れて下さい、お頼みします。
」
彼が注意してみたそこには、花売娘の支度をした少女が雨にうたれて気恥かしげにではあるが、泣きもせずに佇んでいた。
彼はそのひとをちらりと見ただけで、口を噤んだまま傘を差し出した。
そうして彼はそのひとを怪しむ心にもなれずに歩き出した。
「しずかに!……」
「……おや! おや!」
その少女は妙なアクセントで呟いた。
「……」
「泥がはねかえったの、靴へ。
」
彼の頸が振向く瞬間に、その少女の右足は、宙に浮いていた。
そうして彼はその少女の靴へほんの少し蟋蟀の糞ほどの泥がはねあがっているのを見つけた。
「何か持っていない?」
「……」
「拭くもの!」
彼はこの言葉で狼狽てながらも、懐中から先刻貰ったプログラムと真新らしいハンカチとを一束たに掴み出した。
彼にとって、そのプログラムは日記の全頁に相当していた。