Japanische Klassiker mit Furigana
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あるこうぎしょ
ある抗議書
菊池 寛
Lesen Sie ある抗議書 (あるこうぎしょ) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.272 Zeichen · 34 Bildschirme
従って私は、坂下鶴吉の如き重悪人に、死刑以上の刑罰を課し得ないと云うが如きは、司法制度に於ける文明主義の欠陥でないかと思うのです。何等の理由もなく、責任もなく、何等の予期もなく、不当に不意に強盗に惨殺される被害者の断末魔のやるせない心外さ、限りなき苦痛、燃ゆるような無念を考うれば、死刑囚の苦しみの如き、余りに軽すぎると思います。自分の犯せる罪悪の為に、殺されるのですもの、其処には充分の諦めも付き、覚悟も定るだろうと思います。
が、現代の刑法の下には、私達は坂下鶴吉の死刑を以て、満足せざるを得なかったのであります。従って、私は死刑囚の苦痛と云うことを色々に、想像してやっと姉夫婦の惨死に対する無念を晴すことにして居ました。
どんなに兇悪な人間でも、国家の鉄の如き腕に依って禁獄され、不可抗力の死を宣告され、否やでも応でも死に対する覚悟を定めなければならぬ恐怖と苦痛とを想像したり、又日一日と処刑の日が近づくにつれ、生に対する執着が却って段々強くなり、必死に運命から逃れんとする無益な然しながら懸命の身悶えなどを考えると、私は姉夫婦の横死以来、鬱積して居た悲慣を漸く洩らすことが出来ました。