Japanische Klassiker mit Furigana
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あるこうぎしょ
ある抗議書
菊池 寛
Lesen Sie ある抗議書 (あるこうぎしょ) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.272 Zeichen · 34 Bildschirme
と、私は急き込んで訊きました。
「まあ! 行って御覧なさい。お気の毒です」と、職業柄、こうした被害者を見馴れて居る刑事さえ、心から同情を表して居るようでありました。
私は、心の中で義兄かそれとも姉かと、思いました。義兄が抵抗した為に斬られたのであろうと思いました。肉親に対する私の利己的な愛は、やっぱり被害者が義兄であって姉でないことを、心私かに祈って居ました。
門から、玄関迄は四間位ありました。私は玄関の格子を開けると、
「姉さん」と、呼んで見ました。内からは、寂としてなんの物音も聞こえないのです。その癖、電燈はアカアカと灯って居るようなのです。
「兄さん!」と、私は繰り返して見ました。が、やっぱりなんの物音も聞えないのです。私は何だか冷めたい固くるしい物が、咽喉からグングン胸の方へ下って行って、胸一杯に拡がるように思いました。格子を持って居る私の手が、ブルブル顫えた為でしょう、格子が無気味に、ガタガタと動きました。私は、障子一枚の向うに姉夫婦の屍骸が横わって居るのを、マザマザと感じました。私は必死の覚悟を固めて玄関の障子をあけました。が、その二畳の間には、なんの異状もありませんでした。