Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あるひのけいけん
ある日の経験
寺田 寅彦
Lesen Sie ある日の経験 (あるひのけいけん) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.946 Zeichen · 10 Bildschirme
に滲み込んでくるような感じが容易には起りにくい。
どうもみんな単にうまい絵を描く事ばかり骨を折っているのではないかという疑いが起って来る。それならば大概の絵はそれぞれの意味でうまいところがあるという事が自分のようなものでも分る。一体自分の求めているようなしみじみとした絵は、こういう処では始めから得られないにきまっているのかもしれない。
おしまいの方の部屋の隅に、女の子の小さな像が一枚かかっていた。童女は黒地に赤い縞の洋服を着て、右の手に花を一輪もっている。一目見ただけで妙な気がした。これはこの会場にふさわしくないほど、物静かな、しんみりとした気持のいい絵であると思った。
この絵には別にこれと云って手っ取り早く感心しなければならないような、一口ですぐ云ってしまわれるような趣向やタッチが、少なくも私には目に立たない。それだけ安易な心持で自然に額縁の中の世界へ這入って行けるように思う。じっと見ていると、何かしら嬉しいような有難いような気がして来る。ほんとうに描いた人の心持が、見ている自分の心に滲み込んで来るように思う。
どういう訳だか分らないが、あの右の手の何とも名状の出来ない活きた優雅な曲線と鮮やかに紅い一輪の花が絵の全体に一種の宗教的な気分を与えている。