Japanische Klassiker mit Furigana
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あるひのれんげつに
ある日の蓮月尼
岡本 かの子
Lesen Sie ある日の蓮月尼 (あるひのれんげつに) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.878 Zeichen · 25 Bildschirme
それよりもなお深い絶望に遇っては自己反虐ということがやっと残って居る勇気を喚び起すのです――(しばらく瞑目した後独白のように)青年よ、お前はお前の心のなかで、善良なものが真心の一撃に遇ってうろうろ戸惑うのを見た。そして蹴倒してでもやり度いくらいにそれを不甲斐ないものに思った。然しお前の心はもう善良なものを見くびって仕舞った。だからお前はもう善良なものでは生きる力を得られなくなった。お前は一度心のなかでは自殺した。而も死に切れないで藻掻きのたうち廻った後、自分の人間性の中から埋火を掘り起すように、ようやく見付け出して来たのが悪の力だ。お前は最初は慄えた。然しその力はいう。わしを使って見給え。案外人間を真剣にするものだから。お前は遂に彼に従うことにした――お前が精神的に死に切れなかったのはまだ恋の熱情があったからだね。その熱情は今迄善良と思う純真な心によって導かれて居る。だが今度は悪の力でそれが後押しされるのだ。およそ人間が悪の力で後押しされる恋の情熱の嚮う途は大概極まって居る。肉体だ! 奪略だ! 蹂躙だ! 何という悲痛な真剣な獣の道だろう。わたしの前には青い火と赤い火が燃えて居る。