Japanische Klassiker mit Furigana
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おいてけぼり
おいてけ堀
田中 貢太郎
Lesen Sie おいてけ堀 (おいてけぼり) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.763 Zeichen · 4 Bildschirme
「おい、てけ、おい、てけ」
金太はやろうとした足をとめた。
「おい、てけ、おい、てけ」
金太は忽ち、嘲の色を浮べた。
「なに云ってやがるんだ、ふざけやがるな、糞でも啖えだ」
金太はさっさとあるいた。と、また、おい、てけの声が聞えて来た。
「まだ云ってやがる、なに云ってやがるのだ、こんな旨い鮒をおいてってたまるものけい、ふざけやがるな。狸か、狐か、口惜けりゃ、一本足の唐傘にでもなって出て来やがれ」
金太は気もちがわるいので足はとめなかった。と、眼の前へひょいと出て来た者があった。それは人の姿であるから一本足の唐傘ではなかった。
「何だ」
鈍い月の光に眼も鼻もないのっぺらの蒼白い顔を見せた。
「わたしだよ、金太さん」
金太はぎょっとしたが、まだ何処かに気のたしかなところがあった。金太は魚籃と釣竿を落とさないようにしっかり握って走った。後からまた聞えてくるおいてけの声。
「なに云やがるのだ」
金太はどんどん走って池の縁を離れた。来る時には気が注かなかったが、其処に一軒の茶店があった。金太はそれを見るとほっとした。金太はつかつかと入って往った。
「おい、茶を一ぱいくんねえ」