Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おさん

おさん

山本 周五郎

Lesen Sie おさん von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.128 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

ひるがお、雨降り朝顔ともいう、あのつまらない花のことだ。そう云われて思いだしたのだが、夏の終りごろだったろう、茶箪笥の上におれはその花をみつけたことがあった。朝顔に似ているがもっと小さな、薄桃のつまらない花を、古い白粉壺に活けてあるのだ。その花を摘むと雨が降るって、子供のじぶんからいわれていた。迷信にきまってるが、誰でも知っていることだし職人は縁起をかつぐものだ。雨はおれたち職人にとって禁物だから、こういうことはよせと云った。ところがおさんはよさない、ひょいと気がつくとその花が活けてある。叱ってやると、おれの眼につかないところに活けておくというしまつだ。どういうつもりだ、とおれは問い詰めた。

――ごめんなさい、あたしこの花が可哀そうでしようがないの、とおさんは云った。ほかのたいていな花は大事にされるのに、この花は誰の眼もひかない、地面に咲いていれば、人は平気で踏んづけていってしまう、それが可哀そうだから、つい摘んで来て活けてやりたくなるのよ。

おれはそれっきり小言は云わなかった。おさんはそのことが原因ではないかと思ったらしい。おれはあいまいに口を濁した。