Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おさん

おさん

山本 周五郎

Lesen Sie おさん von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.128 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

顔かたちはどうしても思いだせないが、ぜんたいの姿と、そのときどきの身振り、泣き声や叫び声、訴えかける言葉などは、つい昨日のもののように鮮やかに、はっきりと記憶からよみがえってきた。

彼はびくっとして眼をあいた。障子を忍びやかにあけて、女がはいって来たのだ。女は派手な色の寝衣に、しごきを前で結び、髪の毛を解いていた。

「おおさぶい」女は火のはいった十能を持って、素足で火鉢へ近よった、「このうちのおかみさんがやかましいの、ゆうべのこと勘づいたらしいのよ」

「むりなまねをするなよ」

「来ちゃあいけなかったかしら」

「むりをするなって云うんだ」

「むりは承知のうえよ」女は火鉢へ火を移し、炭を加えてから鉄瓶を掛けた、「あたしこんなうちにみれんなんかないんだから」

「おれは明日ここを立つんだぜ」

「思ったとおりね」

「なにが」と参太は女を見た。

「あんたが立つことよ」女はしごきを解いてから行燈を消し、こっちへ来て、参太の横へすべり込んだ、「――冷たくってごめんなさい、ねえ、あたしお願いがあるの」

「断わっておくがおれは女房持ちだぜ」

「おかみさんにしてくれなんてんじゃないの」と云って女は含み笑いをした、「――ちょっとのまこうさせてね、すぐにあったまるから、あたしの躯ってあったかいのよ」