Japanische Klassiker mit Furigana
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おさん
おさん
Lesen Sie おさん von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.343 Zeichen · 21 Bildschirme
世の中を立派に生きとおすように生れついた人と、そうでない人と、はじめからはっきり区別がついているんじゃないかしら。」
「いいえ、鈍感なんですのよ、あたしなんかは。ただ、……」
「ただ?」
夫は、本当に狂ったひとのような、へんな目つきで私の顔を見ました。私は口ごもり、ああ、言えない、具体的な事は、おそろしくて、何も言えない。
「ただね、あなたがお苦しそうだと、あたしも苦しいの。」
「なんだ、つまらない。」
と、夫は、ほっとしたように微笑んでそう言いました。
その時、ふっと私は、久方振りで、涼しい幸福感を味わいました。(そうなんだ、夫の気持を楽にしてあげたら、私の気持も楽になるんだ。道徳も何もありやしない、気持が楽になれば、それでいいんだ。)
その夜おそく、私は夫の蚊帳にはいって行って、
「いいのよ、いいのよ。なんとも思ってやしないわよ。」
と言って、倒れますと、夫はかすれた声で、
「エキスキュウズ、ミイ。」
と冗談めかして言って、起きて、床の上にあぐらをかき、
「ドンマイ、ドンマイ。」
夏の月が、その夜は満月でしたが、その月光が雨戸の破れ目から細い銀線になって四、五本、蚊帳の中にさし込んで来て、夫の痩せたはだかの胸に当っていました。