Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
「ど、どなたでござんす」
「叱っ、静かにしねえ。怪しいものじゃねえよ。おいらだよ」
「あッ、お前は兄さん。――」
「ええもう、静かにしろというのに。お袋の耳へへえッたら、事が面倒ンなる」
そういいながら、出窓の縁へ肘を懸けて、するりと体を持ちあげると、如何にも器用に履いた草履を右手で脱ぎながら、腰の三尺帯へはさんで、猫のように青畳の上へ降り立ったのは、三年前に家を出たまま、噂にさえ居所を知らせなかった兄の千吉だった。――藍微塵の素袷に算盤玉の三尺は、見るから堅気の着付ではなく、殊に取った頬冠りの手拭を、鷲掴みにしたかたちには、憎いまでの落着があった。
まったく夢想もしなかった出来事に、おせんは、その場に腰を据えたまま、直ぐには二の句が次げなかった。
「おせん。おめえ、いくつンなった」
「十八でござんす」
「十八か。――」
千吉はそういって苦笑するように頷いたが、隣座敷を気にしながら、更に声を低めた。
「怖がるこたァねえから、後ずさりをしねえで、落着いていてくんねえ。おいらァ何も、久し振りに会った妹を、取って食おうたァいやァしねえ」
「あかりを、つけさせておくんなさい」