Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
先ァおめえに、家蔵売ってもいとわぬ程の、首ッたけだというじゃねえか」
「まァ兄さん」
「恥かしがるにゃァ当らねえ。何もこっちから、血道を上げてるという訳じゃなし、おめえに惚れてるな、向う様の勝手次第だ。――おせん。そこでおめえに相談だが、ひとつこっちでも、気のある風をしちゃあくれめえか」
「えッ」
「おめえも十八だというじゃァねえか。もうてえげえ、そのくれえの芸当は、出来ても辱にゃァなるめえぜ」
千吉は、たじろぐおせんを見詰めながら、四角く坐って詰め寄った。
七
「もし、兄さん」
月は雲に覆われたのであろう。障子を漏れる光さえない部屋の中は、僅かに隣から差す行燈の方影に、二人の半身を淡く見せているばかり、三年振りで向き合った兄の顔も、おせんははっきり見極めることが出来なかった。
その方暗の中に、おせんの声は低くふるえた。
「兄さん」
「え」
「帰っておくんなさい」
「何んだって。おいらに帰れッて」
「あい」
「冗談じゃねえ。用がありゃこそ、わざわざやって来たんだ。なんでこのまま帰れるものか。そんなことよりおいらの頼みを、素直にきいてもらおうじゃねえか。おめえさえ首を縦に振ってくれりゃァ、からきし訳はねえことなんだ。