Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

「急いでくんねえよ」

「ようがす」

「急病人の知らせに行くんだからの」

「合点だ」

返事は如何にも調子がよかったが、肝腎の駕籠は、一向突ッ走ってはくれなかった。

「ちぇッ。吉原だといやァ、豪勢飛びゃァがるくせに、谷中の病人の知らせだと聞いて、馬鹿にしてやがるんだろう。伝吉ァただの床屋じゃねえんだぜ。当時江戸で名高え笠森おせんの、襟を剃るなァおいらより外にゃ、広い江戸中に二人たねえんだ」

伝吉が駕籠の中で鼻の頭を引ッこすってのひとり啖呵も、駕籠屋には少しの効き目もないらしく、駕籠の歩みは、依然として緩やかだった。

三

床屋の伝吉が、笠森の境内へ着いたその時分、春信の住居で、菊之丞の急病を聞いたおせんは無我夢中でおのが家の敷居を跨いでいた。

「お母さん」

「おやおまえ、どうしたというの、何かお見世にあったのかい」

今ごろ帰って来ようとは、夢にも考えていなかったお岸は、慌しく駆け込んで来たおせんの姿を見ると、まず、怪我でもしたのではないかと、穴のあく程じッと見詰めながら、静かに肩へ手をかけたが、いつもと様子の違ったおせんは、母の手を振り払うようにして、そのまま畳ざわりも荒く、おのが居間へ駆け込んで行った。