Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

北を枕に、静かに眼を閉じている菊之丞の、女にもみまほしいまでに美しく澄んだ顔は、磁器の肌のように冷たかった。

白粉刷毛を持ったおせんの手は、名匠が毛描きでもするように、その上を丹念になぞって行った。

眼、口、耳。――真白に塗りつぶされたそれらのかたちが、間もなく濡手拭で、おもむろにふき清められると、やがて唇には真紅のべにがさされて、菊之丞の顔は今にも物をいうかと怪しまれるまでに、生々と蘇った。

おせんは、じッとその顔に見入った。

「吉ちゃん。――もし、吉ちゃん」

次第におせんの声は、高かった。呼べば答えるかと思われる口許は、心なしか、寂しくふるえて見えた。

「――あたしゃ、これから先も、きっとおまえと一緒に、生きて行くでござんしょう。おまえもどうぞ、魂だけはいつまでも、あたしの傍にいておくんなさい。あたしゃ千人万人の人からいい寄られても、死ぬまで動きはいたしませぬ。――もし、吉ちゃん。……」

ぽたりと落ちたおせんの涙は、菊之丞の頬をぬらした。

「これはまァ折角お化粧したお顔へ。……」

おせんはもう一度、白粉刷毛を手に把った。と、次の間から聞えて来たのは、妻女のおむらの声だった。