Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
「そいつァいけねえ。おれァ師匠の使いで、おせんのとこまで行かにゃならねえんだ」
七
隈取りでもしたように眼の皮をたるませた春重の、上気した頬のあたりに、蝿が一匹ぽつんととまって、初秋の陽が、路地の瓦から、くすぐったい顔をのぞかせていた。
「おっといけねえ。春重がやってくるぜ」
煙草屋の角に立ったまま、爪を煮る噂をしていた松五郎は、あわてて八五郎に目くばせをすると、暖簾のかげに身を引いた。
「隠れるこたぁなかろう」
「そうでねえ。おいらは今逃げて来たばかりだからの。見付かっちァことだ」
「そんなら、そっちへ引っ込んでるがいい。もののついでに、おれがひとつ、鎌をかけてやるから。――」
蛙のように、眼玉ばかりきょろつかせて暖簾のかげから顔をだした松五郎は、それでもまだ怯えていた。
「大丈夫かの」
「叱ッ。そこへ来たぜ」
出合頭のつもりかなんぞの、至極気軽な調子で、八五郎は春重の前へ立ちふさがった。
「重さん、大層早えの」
びくっとしたように、春重が爪先で立ち止った。
「八つぁんか」
「八つぁんじゃねえぜ、一ぺえやったようないい顔色をして、どこへ行きなさる」
「柳湯への」