Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
おどけてはいるが、どこか犯し難いところのある顔かたちは、敵持つ武家が、世を忍んでの飴売だとさえ噂されて、いやが上にも人気が高く、役者ならば菊之丞、茶屋女なら笠森おせん、飴屋は土平、絵師は春信と、当時切っての評判者だった。
「わッ、土平だ土平だ」
「それ、みんな来い、みんな来いやァイ」
「お母ァ、銭くんな」
「父、おいらにも銭くんな」
「あたいもだ」
「あたしもだ」
軒端に立つ蚊柱のように、どこからともなく集まって来た子供の群は、土平の前後左右をおッ取り巻いて、買うも買わぬも一様にわッわッと囃したてる賑やかさ、長屋の井戸端で、一心不乱に米を磨いでいたお上さん達までが、手を前かけで、拭きながら、ぞろぞろつながって出てくる有様は、流石に江戸は物見高いと、勤番者の眼の玉をひっくり返さずにはおかなかった。
「――さァさ来た来た、こっちへおいで、高い安いの思案は無用。思案するなら谷中へござれ。谷中よいとこおせんの茶屋で、お茶を飲みましょ。煙草をふかそ。煙草ふかして煙だして、煙の中からおせんを見れば、おせん可愛や二九からぬ。色気程よく靨が霞む。霞む靨をちょいとつっ突いて、もしもしそこなおせん様。