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Japanische Klassiker mit Furigana

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おりつとこらと

お律と子等と

芥川 竜之介

Lesen Sie お律と子等と (おりつとこらと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.195 Zeichen · 51 Bildschirme

Aozora Bunko

「好いやい。」

兄はそう云うより早く、気違いのように母を撲とうとした。が、その手がまだ振り下されない内に、洋一よりも大声に泣き出してしまった。――

母がその時どんな顔をしていたか、それは洋一の記憶になかった。しかし兄の口惜しそうな眼つきは、今でもまざまざと見えるような気がする。兄はただ母に叱られたのが、癇癪に障っただけかも知れない。もう一歩臆測を逞くするのは、善くない事だと云う心もちもある。が、兄が地方へ行って以来、ふとあの眼つきを思い出すと、洋一は兄の見ている母が、どうも彼の見ている母とは、違っていそうに思われるのだった。しかもそう云う気がし出したのには、もう一つ別な記憶もある。――

三年前の九月、兄が地方の高等学校へ、明日立とうと云う前日だった。洋一は兄と買物をしに、わざわざ銀座まで出かけて行った。

「当分大時計とも絶縁だな。」

兄は尾張町の角へ出ると、半ば独り言のようにこう云った。

「だから一高へはいりゃ好いのに。」

「一高へなんぞちっともはいりたくはない。」

「負惜しみばかり云っていらあ。田舎へ行けば不便だぜ。アイスクリイムはなし、活動写真はなし、――」