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Japanische Klassiker mit Furigana

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おりつとこらと

お律と子等と

芥川 竜之介

Lesen Sie お律と子等と (おりつとこらと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.195 Zeichen · 51 Bildschirme

Aozora Bunko

賢造はとうとう苦い顔をして、抛り出すようにこう云った。洋一も姉の剛情なのが、さすがに少し面憎くもなった。

「谷村さんは何時頃来てくれるんでしょう?」

「三時頃来るって云っていた。さっき工場の方からも電話をかけて置いたんだが、――」

「もう三時過ぎ、――四時五分前だがな。」

洋一は立て膝を抱きながら、日暦の上に懸っている、大きな柱時計へ眼を挙げた。

「もう一度電話でもかけさせましょうか?」

「さっきも叔母さんがかけたってそう云っていたがね。」

「さっきって?」

「戸沢さんが帰るとすぐだとさ。」

彼等がそんな事を話している内に、お絹はまだ顔を曇らせたまま、急に長火鉢の前から立上ると、さっさと次の間へはいって行った。

「やっと姉さんから御暇が出た。」

賢造は苦笑を洩らしながら、始めて腰の煙草入れを抜いた。が、洋一はまた時計を見たぎり、何ともそれには答えなかった。

病室からは相不変、お律の唸り声が聞えて来た。それが気のせいかさっきよりは、だんだん高くなるようでもあった。谷村博士はどうしたのだろう? もっとも向うの身になって見れば、母一人が患者ではなし、今頃はまだ便々と、回診か何かをしているかも知れない。