Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けむりをはかぬえんとつ

けむりを吐かぬ煙突

夢野 久作

Lesen Sie けむりを吐かぬ煙突 (けむりをはかぬえんとつ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.836 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

そのうちに未亡人は札を数え終った。

「……あの……六千二百円ばかり御座います。ハシタが附きまして失礼ですけど、用意しておいたのですから……」

「……それは……多過ぎます……」

「イイエ。あの失礼ですけど、わたくしの寸志で御座いますから……」

「ありがとう存じます。お約束は固く守ります」

私は思わず頭を下げさせられた。今更に伯爵未亡人の名声が高大な理由を認めない訳に行かなかった。

しかも、こんな場合本能的に、そうした気前を見せる相手の心理状態に、是非とも探り入らずには措かぬ習慣を持っている私のアタマが、この時に限って痲痺したようになっていたのは何故であったろうか。自分でも気付かないうちに未亡人の魔力に毒されていたのであろうか。それとも相手の頭の良さにまいっていたのであろうか。……千円やそこらのお負けにポーッとなるような私ではなかったが……。

……さもあらばあれ……。

大小取交ぜた分厚い札束を、いい加減に二分して左右の内ポケットに突込んだ私は、すこし寛いだ気持になった。すすめられるまにまに細巻の金口を取って火を点けた。この際私に危害を加えるような、ヘマな相手でない事がハッキリと直感されたから……。