Japanische Klassiker mit Furigana
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このなつ
この夏
宮本 百合子
Lesen Sie この夏 (このなつ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.213 Zeichen · 13 Bildschirme
尻尾の部分になる最後の一節だけ、艷のある甲羅のようなもので覆われている。一寸見ると、そして、這ってゆく方角を念頭に置かないと、その実は尻尾である茶色甲冑の方が頭と感違いされるのだ。私は、近ごろ熾になりたての熱心さでいい加減雑誌の上を這い廻らせてから、楊子の先でちょいと、胴のところに触って見た。するとまあ虫奴の驚きようといったら! 彼――彼女――は突つかれたはずみに、ぴんとどこかで音をさせ一二分体全体で飛び上って落ちると、気違いのように右や左に転げ廻った。どうすることかと見ていると散々ころげて私の見当をうまく狂わしてやったとでも思ったのだろう、今度は茶色甲冑を先にして、偉い勢いで逆行し始めたではないか。而も、すっかり逆行しきるのではない。行ってはかえり、行ってはかえり、茶色甲冑が嘘の頭だと観破している私でさえ、そう両方に、自信をもって動かれると、どちらが本当の頭だか、いやに眼がちらつくようになって来る。虫はちゃんとそれを心得、必死の勢いで丹念に早業を繰返すのだ――私は終に失笑した。そして、その滑稽で熱烈な虫を団扇にのせ、庭先の蚊帳つり草の央にすててやった。