Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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このなつ

この夏

宮本 百合子

Lesen Sie この夏 (このなつ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.213 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

ざっといって見ると、明月谷に他から移り住んだ元祖である元記者の某氏、病弱な彫刻家である某氏、若いうちから独身で、囲碁の師匠をし、釈宗演の弟子のようなものであった某女史、決して魚を食わない土方の親方某、通称家鴨小屋の主人某、等々が、宇野浩二氏の筆をもってすれば、躍如として各の真面目を発揮させられるだろうような性格で狭い谷間に暮している。その中に、ふと混り込んだ我々二人の女は――さて何と描かるべきだろう。……

最初から、この家に伴う強い魅力の一つであった釣堀で、フダーヤはよく釣をする。五十銭で買ってもらった釣竿を持ち、小さいなつめ形の顔の上に途方もなく大きい海水帽をかぶり――その鍔をフワフワ風に煽らせながら、勇壮に釣に出かける。彼女を堀に誘うのは、噂に聞いた鯉だ。誰も釣針を垂れないからこの堀には立派な鯉がいますよ、と或る人がいった。不幸なことに、彼女は鯉の洗いが大好きだ。

「さあ、今晩は洗いに鯉こくよ」

絶大な希望で彼女は出かけるのだ。私は、羨みながら机の前に遺っている。よほどして、日によると、数間彼方の釣堀から、遽しい呼び声が起る。

「おーい、早く、バケツ」