Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lesen Sie すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.378 Zeichen · 88 Bildschirme
この頃の空癖で空は低く鼠色に曇り、あたりの樹木からは虫噛んだ青いままの木葉が絶え間なく落ちる。烏や鶏の啼声鳩の羽音が爽かに力強く聞える。溢れる水に濡れた御手洗の石が飜える奉納の手拭のかげにもう何となく冷いように思われた。それにもかかわらず朝参りの男女は本堂の階段を上る前にいずれも手を洗うためにと立止まる。その人々の中に長吉は偶然にも若い一人の芸者が、口には桃色のハンケチを啣えて、一重羽織の袖口を濡すまいためか、真白な手先をば腕までも見せるように長くさし伸しているのを認めた。同時にすぐ隣のベンチに腰をかけている書生が二人、「見ろ見ろ、ジンゲルだ。わるくないなア。」といっているのさえ耳にした。
島田に結って弱々しく両肩の撫で下った小作りの姿と、口尻のしまった円顔、十六、七の同じような年頃とが、長吉をしてその瞬間危くベンチから飛び立たせようとしたほどお糸のことを連想せしめた。お糸は月のいいあの晩に約束した通り、その翌々日に、それからは長く葭町の人たるべく手荷物を取りに帰って来たが、その時長吉はまるで別の人のようにお糸の姿の変ってしまったのに驚いた。赤いメレンスの帯ばかり締めていた娘姿が、突然たった一日の間に、丁度今御手洗で手を洗っている若い芸者そのままの姿になってしまったのだ。