Japanische Klassiker mit Furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lesen Sie すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.378 Zeichen · 88 Bildschirme
渡船から上下りする花見の人の混雑。あたり一面の光景は疲れた母親の眼には余りに色彩が強烈すぎるほどであった。お豊は渡場の方へ下りかけたけれど、急に恐るる如く踵を返して、金竜山下の日蔭になった瓦町を急いだ。そして通りがかりのなるべく汚い車、なるべく意気地のなさそうな車夫を見付けて恐る恐る、
「車屋さん、小梅まで安くやって下さいな。」といった。
お豊は花見どころの騒ぎではない。もうどうしていいのか分らない。望みをかけた一人息子の長吉は試験に落第してしまったばかりか、もう学校へは行きたくない、学問はいやだといい出した。お豊は途法に暮れた結果、兄の蘿月に相談して見るより外に仕様がないと思ったのである。
三度目に掛合った老車夫が、やっとの事でお豊の望む賃銀で小梅行きを承知した。吾妻橋は午後の日光と塵埃の中におびただしい人出である。着飾った若い花見の男女を載せて勢よく走る車の間をば、お豊を載せた老車夫は梶を振りながらよたよた歩いて橋を渡るや否や桜花の賑いを外に、直ぐと中の郷へ曲って業平橋へ出ると、この辺はもう春といっても汚い鱗葺の屋根の上に唯だ明く日があたっているというばかりで、沈滞した堀割の水が麗な青空の色をそのままに映している曳舟通り。