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Japanische Klassiker mit Furigana

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すみだがわ

すみだ川・新橋夜話 他一篇

永井 荷風

Lesen Sie すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.378 Zeichen · 88 Bildschirme

Aozora Bunko

蘿月は暫くあたりを眺めた後、それとなく長吉の顔をのぞくようにして、

「さっきの話は承知してくれたろうな。」

長吉は丁度茶を飲みかけた処なので、頷付いたまま、口に出して返事はしなかった。

「とにかくもう一年辛抱しなさい。今の学校さえ卒業しちまえば……母親だって段々取る年だ、そう頑固ばかりもいやアしまいから。」

長吉は唯だ首を頷付かせて、何処と当もなしに遠くを眺めていた。引汐の堀割に繋いだ土船からは人足が二、三人して堤の向うの製造場へと頻に土を運んでいる。人通りといっては一人もない此方の岸をば、意外にも突然二台の人力車が天神橋の方から駈けて来て、二人の休んでいる寺の門前で止った。大方墓参りに来たのであろう。町家の内儀らしい丸髷の女が七、八ツになる娘の手を引いて門の内へ這入って行った。

長吉は蘿月の伯父と橋の上で別れた。別れる時に蘿月は再び心配そうに、

「じゃ……。」といって暫く黙った後、「いやだろうけれど当分辛抱しなさい。親孝行して置けば悪い報はないよ。」

長吉は帽子を取って軽く礼をしたがそのまま、駈けるように早足に元来た押上の方へ歩いて行った。同時に蘿月の姿は雑草の若芽に蔽われた川向うの土手の陰にかくれた。