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Japanische Klassiker mit Furigana

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すみだがわ

すみだ川・新橋夜話 他一篇

永井 荷風

Lesen Sie すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.378 Zeichen · 88 Bildschirme

Aozora Bunko

そのまま語って、泣きながら釣台の後について行った。途法にくれた蘿月はお豊の帰って来るまで、否応なく留守番にと家の中に取り残されてしまった。

家の中は区役所の出張員が硫黄の煙と石炭酸で消毒した後、まるで煤掃きか引越しの時のような狼藉に、丁度人気のない寂しさを加えて、葬式の棺桶を送出した後と同じような心持である。世間を憚るようにまだ日の暮れぬ先から雨戸を閉めた戸外には、夜と共に突然強い風が吹き出したと見えて、家中の雨戸ががたがた鳴り出した。気候はいやに肌寒くなって、折々勝手口の破障子から座敷の中まで吹き込んで来る風が、薄暗い釣ランプの火をば吹き消しそうに揺ると、その度々、黒い油煙がホヤを曇らして、乱雑に置き直された家具の影が、汚れた畳と腰張のはがれた壁の上に動く。何処か近くの家で百万遍の念仏を称え始める声が、ふと物哀れに耳についた。蘿月は唯た一人で所在がない。退屈でもある。薄淋しい心持もする。こういう時には酒がなくてはならぬと思って、台所を探し廻ったが、女世帯の事とて酒盃一ツ見当らない。表の窓際まで立戻って雨戸の一枚を少しばかり引き開けて往来を眺めたけれど、向側の軒燈には酒屋らしい記号のものは一ツも見えず、場末の街は宵ながらにもう大方は戸を閉めていて、陰気な百万遍の声がかえってはっきり聞えるばかり。