Japanische Klassiker mit Furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lesen Sie すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.378 Zeichen · 88 Bildschirme
女学生のでこでこした庇髪が赤ちゃけて、油についた塵が二目と見られぬほどきたならしい。一同黙っていずれも唇を半開きにしたまま遣り場のない目で互に顔を見合わしている。伏目になって、いろいろの下駄や靴の先が並んだ乗客の足元を見ているものもある。何万円とか書いた福引の広告ももう一向に人の視線を引かぬらしい。婆芸者が土色した薄ぺらな唇を捩じ曲げてチュウッチュウッと音高く虫歯を吸う。請負師が大叭の後でウーイと一ツをする。車掌が身体を折れるほどに反して時々はずれる後の綱をば引き直している。
麹町の三丁目で、ぶら提灯と大きな白木綿の風呂敷包を持ち、ねんねこ半纏で赤児を負った四十ばかりの醜い女房と、ベエスボオルの道具を携えた少年が二人乗った。少年が夢中で昨日済んだ学期試験の成績を話し出す。突然けたたましく泣き出す赤児の声に婆芸者の歯を吸う響ももう聞えなくなった。乗客は皆な泣く子の顔を見ている。女房はねんねこ半纏の紐をといて赤児を抱き下し、渋紙のような肌をば平気で、襟垢だらけの襟を割って乳房を含ませる。赤児がやっとの事泣き止んだかと思うと、車掌が、「半蔵門、半蔵門でございます。